遺言書を作成したときとは状況が変わり、その内容の一部を変更したり、または全部を撤回したくなることはあり得ます。
遺言の撤回は遺言者の自由な意思でいつでも行うことができます。
自筆の遺言書であれば、それを破棄すれば撤回したことになります。
公正証書遺言の場合は、原本が公証役場で保管されているため、謄本や正本を破棄しても、撤回したことになりません。
その場合は、遺言の方式に従うことで、つまり新たな遺言書を作成することで、前に作成した遺言書の一部や全部を撤回することができます。
ここでは遺言書の撤回について、詳しく見ていきましょう。
法律上遺言が撤回されたとみなされる場合
遺言の撤回は、次のような遺言者の行為により、遺言者の真意の如何を問わず法律上遺言が撤回されたとみなされる場合があります。
- 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、抵触する部分については、後の遺言が前の遺言を撤回したものとみなす。
- 遺言をした後、その遺言の内容に抵触するような財産の処分などを行ったとき、遺言に抵触する部分を撤回したものとみなす。
- 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については遺言を撤回したものとみなす。
- 遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときは、その破棄した部分について遺言を撤回したものとみなす。
上記のような場合は、遺言は撤回になるわけですが、その結果、相続人の遺留分を侵害するようなことになる可能性があります。
可能であれば、遺留分の対策を考えておいた方がいいでしょう。
遺言書を破棄するということ
「破棄」というのは、遺言書の焼却や切断といった遺言書自体の物理的な破棄はもちろんのこと、それだけではなく、遺言書の文字が識別できないほど塗りつぶすこと等も含まれます。
このような場合、元の文字が読み取れる場合には、原則として破棄したことにはならないとされており、元の遺言が効力を持ったままであることになります。
ただし、赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引いてある場合、一般的に言って、遺言書のすべての内容を破棄して、効力を失わせるという意思が読み取れる場合は、元の文字が読めたとしても、遺言を撤回したとみなされる場合があります。
とはいえ、撤回したいときには、あいまいなやり方では、後々争いにつながる恐れがあるので、明確な方法で行うべきです。
遺言の破棄が遺言者の故意であることについて
遺言者が遺言書を故意に破棄するということは、遺言を撤回しようとする遺言者の意思が確かであろうと推測できます。
このような場合、遺言書の破棄が遺言の撤回であるとみなされます。
したがって、遺言書の意に反している場合や、第三者が破棄した場合は、遺言の撤回とはなりません。
遺言書を撤回したときの効果
遺言書をすべて破棄した場合、遺言そのものが撤回となりますが、遺言書の一部のみを破棄した場合は、破棄した部分のみの撤回にとどまり、残っている部分の遺言は有効のままということになります。
ただし、残りの部分だけでは遺言の意味が不明になったりする場合には全体が無効になる場合もあります。
部分的な破棄の場合で、全体が無効になる場合としてもう一つ上げられるのが、署名部分の破棄です。
署名部分を破棄すると遺言書の様式を満たさなくなるため、遺言書全体が撤回されたことになります。
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